北海道、札幌市のフリーペーパー「スコブル」。香山リカさんのエッセーで心をほぐそう。

スコブル

体と心に効く! エイジレス健康情報マガジン

Regular

:::: :: 連載コンテンツ :: ::::

スコブルvol.31より

こころのストレッチ

「ハロー」「ニイハオ」「アニハセヨ」

 北海道にはときどき帰省するが、新千歳空港でも札幌駅でもまわりから多くの外国語が聞こえてくる。多いのは中国語と韓国語だ。中国、台湾、韓国からたくさんの観光客が来日し、北海道を訪れているのだろう。おおいに楽しんでほしいな、と思う。
 ただ、旅行中は環境の変化、なれない食べもの、睡眠不足などでからだをこわしがちだ。私がいま東京で働いている病院のひとつは大きなホテルがたくさんある地域にあるので、毎日のように体調を崩した中国、韓国からの旅行者が受診に訪れる。
 もちろん多くは通訳のできる添乗員や知人が付き添っているのだが、中にはその人たちもあまり日本語ができず、スマホの翻訳機能を使いながらなんとかコミュニケーションする、という場合もある。
 そんな状況をなんとかしたいと考え、1年前から中国語を習い始めた。「こんにちは。いつから熱が出ていますか」「このクスリを飲んでみてください」くらいの会話ができたらいいかも、と気軽に考えて教室に通い始めた。
 でも、50代も後半になってまったく新しいことに挑戦するのは、あまりにたいへんとわかった。娘というより孫といってもおかしくないような若い中国人女性の先生に、「その発音じゃわかりません」「もっと単語を覚えてきてください」などと注意されて冷や汗をかきっぱなしだ。
 1年たってもまだあいさつさえおぼつかないが、最近、おそるおそる診察室で中国語を使い始めている。とはいっても、「こんにちは」「今日はどうなさいましたか」とかその程度。
 すると、思った以上の反応が返ってきて驚いた。「先生、中国語を話すのですか!」「上手ですね!すごいです!」と高熱や頭痛を訴えていた人が笑顔となり、顔色もよくなる。異国で具合が悪くなって不安な中で聴く母国語は、ひとを元気にする力があるのだろう。
 その笑顔を見ると私もやる気がわいてきて、一生懸命、単語帳を覚える日々だ。言葉ってすごい。そして、外国から来てくれた人とやり取りするってやっぱりステキなことだ。みなさんも、英語や中国語、韓国語のあいさつを覚えて、観光客に話しかけてみませんか。

香山リカさん
香山リカ
昭和35年札幌生まれ。東京医科大卒。豊富な臨床経験を生かして、現代人の心の問題を中心にさまざまなメディアで発言を続けている。専門は精神病理学。音声アプリ ヒマラヤで「香山リカのココロのほぐし方」配信中。精神科医、立教大学現代心理学部映像身体学科教授

Regular

:::: 連載 ::::