北海道、札幌市のフリーペーパー「スコブル」。香山リカさんのエッセーで心をほぐそう。

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体と心に効く! エイジレス健康情報マガジン

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スコブルvol.22より

こころのストレッチ

もしかして、考えすぎ?

「考えすぎをやめる方法、教えてください」
 こんな相談をよく受ける。「ケ・セラ・セラ、人生はなるようになるさ」といくらシャンソンを歌ってみても、やっぱり考え込んでしまう。そんな人も多いのだ。いくら考えても答えは出ない、と分かっているようなことでも、「ああでもない、こうでもない」と考え込んでしまうと、それだけで気持ちが滅入り、元気がなくなってしまうこともある。そうなると、もはや「考えすぎ病」と言ってもよいかもしれない。
 この「考えすぎ病」の初期段階にいる人には、「おまじないをひとつ決めてください」とアドバイスする。何かを考え始めて3分くらいたったら、「はい、おしまい」「ここでストップ」など、分かりやすいフレーズを頭の中で唱える。それと同時に、座っている人は立ち上がり、キッチンに行ってお湯をわかしてお茶をいれて飲む。何かの動作といっしょの「おまじない」のワードは、意外に効果があるものだ。
 中には「考えすぎ病」が進行して、「おまじない」では効果がない、という人もいる。そういう人には、「考えるのは仕方ないけど、それと同じ時間、“これからどうする”“とりあえずしたいのは何?”と未来にも目を向けてくださいね」とアドバイスする。
 でも、それに対して「分かりました」と納得する人は少なく、決まって同じ答えが返ってくる。「いえ、いま考えていることを解決しなければ、とても今後になんか目が向かないんです」
 それは違う。人間というもの、いまどんなに悩みがあっても、心のどこかで「それはそれ」としてやりたいこと、行きたい場所、食べたいものなどのことも考えているはずなのだ。まじめな人は、「そんな場合ではない」と心の中にある願望や未来への芽を押しつぶしてしまう。
 そうではなくて、「いま難問が目の前にあるけど、この映画の公開は今週いっぱいか…じゃ、とりあえず見に行っちゃおう」と出かければいいのだ。悩みはいったん棚にあげる。「カッコ」に入れてしばらくは見ないようにする。やりたいことを優先して、そのあとでまた考えればよい。
 そして、そうやって「悩みの棚上げ」をして目の前の現実に取り組んでいると、意外に気持ちも軽くなって行くものなのだ。「考えすぎ病」の人、ぜひ試してみてください。

香山リカさん
香山リカ
昭和35年札幌生まれ。東京医科大卒。豊富な臨床経験を生かして、現代人の心の問題を中心にさまざまなメディアで発言を続けている。専門は精神病理学。NHKラジオ「香山リカのココロの美容液」パーソナリティー。精神科医、立教大学現代心理学部映像身体学科教授。

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