北海道、札幌市のフリーペーパー「スコブル」。香山リカさんのエッセーで心をほぐそう。

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体と心に効く! エイジレス健康情報マガジン

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スコブルvol.13より

こころのストレッチ

たまには自分にごほうびを

 生きていれば、いろいろな悩みはつきものです。私が働く精神科の診察室に来る人たちも、みんなどこにでもいるフツーの人たちばかり。いつも「たまたま今は私が診る側に座っているけれど、いつ私自身が診られる側になるかわからないな」と思うのです。
 では、そんな人生の荒波に負けず、どうすれば少しでも明るく楽しく毎日を送ることができるか。ここではそのヒントを具体的にお話していくつもりです。
 その第1回目、今日のヒントは「自分を甘やかせ!」です。
 診察室にいると、実に多くの人たちが自分に厳しすぎ、からい点をつけていることに気づかされます。「先生、私ってダメ人間なのです」「何をやっても失敗ばかり」「ひとに自慢できる長所なんてひとつもありません」などなど、みなさん、自分に対してキツイことを言います。
 でも、考えてみましょう。自分のからだや心は、これまでの波乱万丈な人生に、文句ひとつ言うことなくじっと耐え、必死に乗り越えてきたのです。それに対して「いいところなんて何もない」というのは、あまりに失礼ではないでしょうか。私はよく言います。
「そんなに自分を見くびっては、からだも心も気を悪くしますよ。謙遜もほどほどに、もう少し自分に甘い点をつけてあげて、いやー、よくがんばってる、けっこういい線、行ってる、と言ってあげてもいいのではないですか」。
 ほめられて悪い気がする人はいません。それは自分のからだや心だって同じこと。「点数をつけたらマイナスだ」などと言われるよりも、「まあ、それなりに一生懸命、やって来たよね」と言われるほうが、からだや心だって「あら、そう?わかってくれてる?それじゃ、もう少しがんばっちゃおうかな」と気分をよくして、いっそう張りきるのではないでしょうか。
 もちろん、ときには「もっとがんばろう」「これで満足しちゃいけない」と自分に厳しい目を向けることも必要。ただ、自分に厳しくしすぎて、倒れ込むまで打ちのめすのはおかしなことだと思います。「100点とは言わないけど、70点の合格点は取れてるよね」とちょっと自分にやさしい目を向けて、たまには甘やかしてごほうびも与えてあげる。それが「ストレスに負けずに生きるヒント」の基本です。

香山リカさん
香山リカ
昭和35年札幌生まれ。東京医科大卒。豊富な臨床経験を生かして、現代人の心の問題を中心にさまざまなメディアで発言を続けている。専門は精神病理学。NHKラジオ「香山リカのココロの美容液」パーソナリティー。精神科医、立教大学現代心理学部映像身体学科教授。

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