たまには自分にごほうびを
生きていれば、いろいろな悩みはつきものです。私が働く精神科の診察室に来る人たちも、みんなどこにでもいるフツーの人たちばかり。いつも「たまたま今は私が診る側に座っているけれど、いつ私自身が診られる側になるかわからないな」と思うのです。
では、そんな人生の荒波に負けず、どうすれば少しでも明るく楽しく毎日を送ることができるか。ここではそのヒントを具体的にお話していくつもりです。
その第1回目、今日のヒントは「自分を甘やかせ!」です。
診察室にいると、実に多くの人たちが自分に厳しすぎ、からい点をつけていることに気づかされます。「先生、私ってダメ人間なのです」「何をやっても失敗ばかり」「ひとに自慢できる長所なんてひとつもありません」などなど、みなさん、自分に対してキツイことを言います。
でも、考えてみましょう。自分のからだや心は、これまでの波乱万丈な人生に、文句ひとつ言うことなくじっと耐え、必死に乗り越えてきたのです。それに対して「いいところなんて何もない」というのは、あまりに失礼ではないでしょうか。私はよく言います。
「そんなに自分を見くびっては、からだも心も気を悪くしますよ。謙遜もほどほどに、もう少し自分に甘い点をつけてあげて、いやー、よくがんばってる、けっこういい線、行ってる、と言ってあげてもいいのではないですか」。
ほめられて悪い気がする人はいません。それは自分のからだや心だって同じこと。「点数をつけたらマイナスだ」などと言われるよりも、「まあ、それなりに一生懸命、やって来たよね」と言われるほうが、からだや心だって「あら、そう?わかってくれてる?それじゃ、もう少しがんばっちゃおうかな」と気分をよくして、いっそう張りきるのではないでしょうか。
もちろん、ときには「もっとがんばろう」「これで満足しちゃいけない」と自分に厳しい目を向けることも必要。ただ、自分に厳しくしすぎて、倒れ込むまで打ちのめすのはおかしなことだと思います。「100点とは言わないけど、70点の合格点は取れてるよね」とちょっと自分にやさしい目を向けて、たまには甘やかしてごほうびも与えてあげる。それが「ストレスに負けずに生きるヒント」の基本です。