北海道、札幌市のフリーペーパー「スコブル」。香山リカさんのエッセーで心をほぐそう。

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スコブルvol.48より

こころのストレッチ

香山リカさん
[精神科医]香山リカさん
1960年札幌生まれ。東京医科大学卒業後、精神科医に。臨床のかたわら帝塚山学院大学教授、立教大学教授などとして教育活動にも携わる。2022年4月より、むかわ町国保診療所の副所長。週末は東京で精神科医としての臨床を継続している

秋にやりたいことは…

 今年の夏は暑かった。診療所の朝礼で、看護師長が「みなさん、忙しい日々ですが、その合間に短い夏を楽しみましょう」と話したのが8月はじめ。でも、夏は全然、短くなかった。
 これだけ暑いと、夏を楽しむどころか、外に出るのも命がけだ。診療所にも熱中症の人が大勢、やって来た。中には救急車で運ばれて来た人もいる。幸い、みんな点滴をしたりからだをクーリングしたりして回復したが、対応が遅れれば命の危険にもつながりかねない。「熱中症が増えています」というニュースを見て、レジャーや外出を控えたという人も少なくないだろう。
 さて、そんな厳しい夏を乗り切って迎える秋、どんな風にすごそうか。夏にできなかったことをしよう、といろいろ計画を立てている人もいるはずだ。私の場合、熱中症の人たちの手当てに追われた夏が終われば、少しゆっくり読書をしたり音楽を聴いたりする余裕ができるのではないか、と楽しみにしている。
 でも、期待しすぎにもちょっと注意が必要だ。
 夏の疲れもからだにたまっている。それに、夏が長かった分、秋はいつもより短い。「えっ、あれもこれもやろうと思ってたのに」と予定が消化できず、がっかりしてしまうかもしれない。
 こんなときにおすすめしたいのは、「秋にやりたいこと・ベスト3」と計画や予定をせいぜい3つくらいに厳選することだ。それも「家全体を大掃除」といった大きなことではなく、「机まわりを片づける、あの公園に行ってゆっくり散歩、アウトレットで靴を買う」と1日で終わることを3つにとどめる。そして、それをやることができたら、ひとつずつ「よし、できた!気分がいいなー」とおおいに自分をほめる。
 さて、私の「秋の3つ」は何にしよう。そうだ、夏にいただいたのに茹でるのが億劫でそのままにしまってある素麺を食べよう。あとはネットテレビが見られるように設定を行うのと、今年こそは冬にスキーをしたいので道具を買いに行くのとで3つ。
「え、秋の予定がそれだけ?」と思われるかもしれないが、これできっと満足できるはず。たった3日で心が満たされる秋、あなたもすごしてみませんか。

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