北海道、札幌市のフリーペーパー「スコブル」。香山リカさんのエッセーで心をほぐそう。

スコブル

体と心に効く! エイジレス健康情報マガジン

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スコブルvol.40より

こころのストレッチ

自分を ほめてみよう

 ここに来て、同業者つまり医者のメンタル相談に乗る機会が増えた。
 もちろん、医者だってうつ病やパニック障害になることはある。でも割合はそれほど高くないな、と思っていた。それは、医者にはもともと心理的にタフな人が多いからではなく、仕事を通してやりがいや達成感を手にしやすいからではないか。
 私の経験で考えてみても、重いうつ状態で診察室を訪れた人が、何ヵ月かの治療で回復し、仕事に復帰できるようになると、たいていは感謝の言葉を口にしてくれる。「先生のおかげで助かりました。ありがとうございます。」そういうときは、「いえいえ」などと否定せずに笑顔で「よかったですね」と答える。すると私の胸には満足感が広がり、報われた気持ちになるのだ。これを味わうことが、自分のメンタルの充電にもなっていると感じている。
 ところが、コロナ禍が始まり、医療をめぐる状況はずいぶん変わった。とくに最近では、「入院が必要な患者さんが病院に入れない」「訪問診療で限られた医療しか受けられず病状が悪化した」というケースが続いている。自宅療養をする中で病状が急変し、亡くなる人も続いている。
 もちろん、いちばんの被害を受けているのは感染した患者さんであり家族なのだが、かかわった医者たちのショックも大きい。「十分なことができなかった」と無力感を感じ、「もっとしてあげられたのでは」と自分を責める人もいる。これまで自分のメンタルを支えていた「報われた気持ち」がまったく得られないまま、疲労だけがたまり、心身の限界を感じて私のようなメンタル医に相談するのだ。
 彼らと話してつくづく思うのは、「日ごろの達成感や報われたという気持ちって大切だな」ということだ。大きな満足感でなくてもいい。今日も散歩ができた、食事が食べられた、洗濯までしちゃった。そういうことでも「あたりまえ」と思わずに、「よし、よくできた!」とちょっと自分を大げさにほめる。そうやって“達成感ポイントかせぎ”をすることで、心のバランスはかなり保たれるのではないだろうか。
 「私ってすごい!がんばってる!」。さっそく今日から声がけしてみませんか?

香山リカさん
香山リカ
昭和35年札幌生まれ。東京医科大卒。豊富な臨床経験を生かして、現代人の心の問題を中心にさまざまなメディアで発言を続けている。専門は精神病理学。音声アプリ ヒマラヤで「香山リカのココロのほぐし方」配信中。精神科医、立教大学現代心理学部映像身体学科教授
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