北海道、札幌市のフリーペーパー「スコブル」。美容・健康に関するお得な情報をお届けします。

スコブル

体と心に効く! エイジレス健康情報マガジン

Pick up

:::: オススメ情報 ::::

スコブルvol.44より

女優、監督、エッセイ。作品を届ける意味は同じ
エンターテインメントを楽しんでほしい


黒木瞳
福岡県八女市出身。1981年宝塚歌劇団に入団。入団2年目で月組娘役トップとなる。85年に退団。以降、映画やドラマ、舞台など第一線で活躍。映画監督、舞台演出、執筆など多方面で才能を発揮。第21回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞ほか受賞歴多数。映画初監督作品は『嫌な女』(2016年)

 この夏、3年ぶりにリアル開催された「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」。黒木瞳さんが監督を務めたオリジナル短編映画『線香花火』が現地で上映され、映画祭を盛り上げた。夕張を訪れた黒木さんに、作品に寄せる思いや、マルチに活躍するパワーの源などについて伺った。

 黒木瞳さんと聞いてまず思い浮かぶのは、舞台や映画、ドラマで活躍する女優としての“顔”だろう。けれども黒木さんが持つ“顔”は一つにとどまらない。映画監督をはじめ、舞台の企画・演出、司会、エッセイや詩、絵本の翻訳などの執筆活動も行う。まさに八面六臂の活躍ぶりだ。「エンターテインメントの世界で、お客さまに作品を届けるのが私の一番好きなこと。女優も監督もエッセイを書くのも、作品を届けるという意味では同じ。みなさんに楽しんでもらいたいと思っています」と、黒木さん。
 映画監督初作品は2016年の『嫌な女』(長編)。以来、『わかれうた』(短編、17年)、『十二単衣を来た悪魔』(長編、20年)、脚本にも携わった今回の『線香花火』と、これまで4作品を世に送り出している。
 全ての作品を通して流れているのは、「ある意味、女性の生き方みたいなもの。女性にイキイキと生きてほしいという思いが強いんです」と、ほほ笑みながら語る。『線香花火』では、異なる境遇でそれぞれの道を手探りしながら、もどかしい現代を生き、思いを交差させる幼なじみの女性2人を、繊細に、そして真摯に描いている。
 演者として映画に出演する際も感謝を忘れたことはないが、監督業では、その思いがひとしお強くなるという。「映画は総合芸術なので、自分一人が頑張っても作品は成立しません。そう教えてくれたのは、宝塚を辞めて最初に出演した映画『化身』の東陽一監督でした。演者やスタッフの誰かが一人欠けても現場は回らないんです。ディレクターの立場になると、ひしひしとそれを実感しますね」。関わった一人一人に感謝の気持ちを持ち続けたいと、あらためて思いを口にした。
 『線香花火』の舞台は、黒木さんが18歳まで過ごした福岡県八女市黒木町だ。今回の作品は、「故郷をロケ地にしたい」という思いから生まれたそう。八女市は日本有数のお茶どころ。隣のみやま市には、今も伝統工芸を守り続ける線香花火の製造所がある。調べる中で、線香花火の火花の移り変わりが人生に例えられていることを知った。心臓のようにドクドクと動く最初の「蕾」は命、パチパチ弾け始める「牡丹」は若者、華やかに火花を散らす大人の「松葉」、そして、静かに収まっていく「散り菊」。映画の中で線香花火は、2人の子供時代を描く印象的なシーンに使われている。
 もう一つ、印象深く使われているのが、中島みゆきの「ファイト!」という曲だ。「監督2作目の『わかれうた』でも、中島さんの同名曲を使わせていただきました。今回も使いたくて」さまざまな曲を聴き込むなかで「ファイト!」に出合い、「ああ、線香花火とこの曲が結びついた」と直感。そこから本格的に脚本の制作が始まったという。
 物語の背景を彩るのは、黒木さんが泳いでいた川や滝壺、通っていた中学校、ロケで借りた同級生の家などなど。2020年の集中豪雨で流されてしまった橋の跡もそのまま撮影した。懐かしく大切な故郷の景色を、スクリーンに焼き付けた。
 実は映画制作は決して順調に進んだわけではない。コロナ禍の影響で、夏の撮影予定が11月に変更になったのだという。スケジュール調整はかなり大変だったそうだが、「数カ月あるなら、もっとホンが良くなるな、と前向きにとらえることができました。実際、ラストシーンの演出は、その期間に思いついたものなんです」。それは主人公がこれでいいんだ、と自らを受け入れる場面。未来への希望を感じさせる美しく力強い演出になっている。
「今はコロナ禍でもあり、戦争も起きています。不穏な空気が流れる中で、私たち一人一人も、戦争とは比べられないけれど、きっと小さな不安や迷いを抱えているはずです。どの世代の方も、この映画を見て、“今日一日、ファイトを出して頑張ろう”という気持ちになってくださると一番うれしいですね」。
 マルチに活躍する黒木さんにパワーの源を伺うと、「メリハリ、ですかね」と笑った。「私はとても怠け者。だからやるときはやるけど、抜くときは抜きます」。そう気さくに語りだす。「自分を叱咤激励して高める日もあれば、だらしなく怠けて社会になんの貢献もしない日もあります(笑)。でも、自分に優しくする日があっていい。たまには自分をほめていい。そんなふうにメリハリを付けることが、父母から受け継いだ命を大切にすることかな、と思うんです」。黒木さんにとって「人生は学び舎」だ。「これまで本当にたくさんの監督や俳優・女優の方に出会い、学ばせてもらいました。ご縁や出会いの一つ一つが自分の血となり肉となっているんだろうなと思います。本もそうですね。今日も移動中、ピアニストの反田恭平さんの著書を読んで、感動しながら来たんです(笑)」。
 まだまだ学びの途中だと言うが、その活躍を励みに背中を追う下の世代は多いだろう。そう伝えると、「私も宝塚の先輩である大地真央さんたちの素敵な背中を見て、追いかけようと思っています。もし私の背中を見て同じように元気になる方がいらっしゃるなら、うれしいですね」。あでやかな笑顔は、包み込むように優しく輝いていた。

短編映画『線香花火』
新しい命を宿し、未婚で実家に戻ったミキ。傷心の彼女の元に親友・卯月からはがきが届く…。黒木瞳さんが監督・脚本を務めた、現代を懸命に生きる女性たちへの応援歌。上映時間25分。10月7日~10日、「第17回札幌国際短編映画祭」にて上映予定
「夢の水たまり」
詩写真集と詩集が2冊セットになった最新刊。10月5日に出版。黒木瞳公式ホームページにて販売。
https://www.kurokihitomi.net/webshop/