北海道、札幌市のフリーペーパー「スコブル」。香山リカさんのエッセーで心をほぐそう。

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体と心に効く! エイジレス健康情報マガジン

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スコブルvol.27より

こころのストレッチ

どっちがいいの? 心の薬

 今日は、“精神科医の悩み”をきいてもらいたい。
 診察室ではじめて出会う人、つまり初診の患者さんにひと通り診察を終え、「不眠の強いうつ病ですね」などと診断をつけ、「このお薬を出しましょう」と伝えると、ときどき「私、薬は飲みたくないんです」と言われることがある。
 「薬は飲みたくありません」と言われたら、医者はどうするか。私の場合、まずはその理由をきく。すると8割は「副作用がこわい」という答えが返ってくるので、少し丁寧に「薬の効果と考えられる副作用」について説明し、「どうですか。あなたの場合、服用するメリットの方が大きいと思うのですが」と伝える。それでほとんどの人は、「そうですね。ではまず飲んでみることにします」と言ってくれる。
 しかし中には、「副作用とか中毒とかではなくて、信念として薬には頼りたくないので」と答える人もいる。
 「私は、カゼを引いてもなるべく薬は飲まないようにしてるのです。うつ病や不眠を治すために薬を飲むなんて、絶対にイヤなんです。」
 そう言われたら、医者はどうするか。それでも「この人は少しでも早く薬を飲んだほうがいい」という場合は、「わかりました。2時間後にもう一度、お会いできますか。ほかの方の診察を終えてから、もう一度お話します」と伝え、外来終了後にじっくり薬の必要性を説明することもある。
 そこまでして薬を出すほどではない、というときには、私はこう言う。
 「なるほど。だとしたら、その分、なにもしないで脳と心とからだを休めていただく必要があります。薬を使ってリラックスさせる分、意識的な休息と食事、そして散歩などの適度な運動でリラックスするのです。時間も十分に使ってくださいね。」
 「わかりました」とその人が「たっぷりとした休息」を約束してくれたら、しめたものだ。
 薬を使わずに、人生の時間をぜいたくに使って自分を癒やす。よく考えたらそちらのほうが人間らしい治療法なのかな、とも思う。薬を使うべきか、それとも…。精神科医のこの悩みに、あなたはどう答えるだろうか。

香山リカさん
香山リカ
昭和35年札幌生まれ。東京医科大卒。豊富な臨床経験を生かして、現代人の心の問題を中心にさまざまなメディアで発言を続けている。専門は精神病理学。音声アプリ ヒマラヤで「香山リカのココロのほぐし方」配信中。精神科医、立教大学現代心理学部映像身体学科教授
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