北海道、札幌市のフリーペーパー「スコブル」。香山リカさんのエッセーで心をほぐそう。

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体と心に効く! エイジレス健康情報マガジン

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スコブルvol.20より

こころのストレッチ

こころの傷の処方箋

「こころの傷」ってどうやって治せばよいのだろう。これは、精神科医たちにとっても大きな問題だ。毎年のようにいろいろな新しい治療プログラムが開発され、提案される。どれもそれなりに有効なのだけど、共通していえることは「時間がかかる」ということだ。
 診察室に来る人は、たいていこんなことを言う。
「10年前、信じていた友人に裏切られ、こころに傷がつきました。いまでもそれを繰り返し思い出して苦しんでいます。この苦しみが一瞬でなおる治療、ありませんか」
 そう、だれもが「時間をかけずにこころの痛み、苦しみや怒りが消えてなくならないか」と願っているのだ。その気持ちはよくわかる。もし私も何かが原因となってこころに傷ができ、常にそれでモヤモヤ、イライラしていたら、こころの専門家のところに行ってこう言うに違いない。
「先生、とにかくこれをすぐにスーッと消すクスリか呪文、ないですか?」
 そこで医者が「治療法はあるにはありますが、週に3回通ってもらってだいたい半年で…」となどと言うと、それだけで相談者がげんなりした顔になるのも当然だ。
 では、どうすればいいのだろう。私は最近、「傷を消す」のではなくて「傷はあっても生きていく」という考え方をすすめることが多い。こころの傷はつらい。苦しい。でも人間は、それでも「『シン・ゴジラ』見た?おもしろいよ」と言われたら、「見てみようかな」という気になる。そのチャンスを逃さず。「でも、私には悩みごとがあるから」などとためらわずに、時間を調べて映画館に足を運ぶ。通りかかった雑貨屋のウィンドウにかわいい形のカップがあれば、「今はそれどころではない。まずこのこころの傷を解決してからだ」などと思わずに、買って家でお茶を飲む。
 あえて傷を治そうとせずに、「それはそれ」として生きることになるべく熱中するのだ。
「そんなウヤムヤにするような方法じゃ、なにも解決しませんよ」と言う人もいるが、解決しなくたっていいじゃない。それでも人生は続いていくのだから。だとしたら、少しでも目の前の日々を楽しいものにしたほうがよいではないか。「先生のやり方いいかげんねえ」と笑ってくれる相談者には、「そうそう、その調子です」と言うことにしている。

香山リカさん
香山リカ
昭和35年札幌生まれ。東京医科大卒。豊富な臨床経験を生かして、現代人の心の問題を中心にさまざまなメディアで発言を続けている。専門は精神病理学。NHKラジオ「香山リカのココロの美容液」パーソナリティー。精神科医、立教大学現代心理学部映像身体学科教授。
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