北海道、札幌市のフリーペーパー「スコブル」。香山リカさんのエッセーで心をほぐそう。

スコブル

体と心に効く! エイジレス健康情報マガジン

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スコブルvol.15より

こころのストレッチ

弱い自分をかくさないで

――精神科医をやっているとストレスがたまりませんか。
 こんな質問をよく受ける。いろいろな人の悩みを聞いていると、こちらも心が滅入ってくるのではないか、と心配してくれるのだ。
 実はこの仕事について約30年、私は診療でストレスを感じたことはない。ストレスを感じるのはもっぱら病院の外の世界でのことであり、院内に一歩、足を踏み入れると、心からほっとする。これが正直なところだ。
 どうしてか。それは、診察室にやって来る人はみんなやさしいからだ。悩みを持ったり傷ついたりしているからやさしいのか、やさしいから傷ついてしまうのか。それはよくわからないが、とにかく病院に来てまでいばっていたり人を攻撃したりする人は、まずいない。たまに不安や興奮などの症状から大声を上げる人はいるが、それもわざとやっているわけではないので、「大丈夫ですよ、心配しないで」と声をかけるとたいていはおさまる。
 そんな人たちが小さな声で語る悩みや過去に経験したいろいろなできごとに耳を傾けながら、いつも「生きていくのは誰にとってもたいへんだな。でもみんながんばっているんだな」と私は自分の心がむしろ休まっていくのを感じることが多い。
 一方、病院の外には「私が、私が」と自己主張をしたり、「自分のほうが偉いんだ」とばかりに自慢ばかりしたりする人がいっぱいいる。私はその中では仕事柄か聞き役にまわることも多く、そんな人たちとしばらく話していると「もう疲れた」とぐったりしてしまう。そして、こう思うのだ。
――そんなに自分を強く見せなくてもいいのに。もっと弱い自分をありのままにさらけ出しても、誰もあなたを蹴落としたりはしないのに。
 強く見せる人、相手を見下す人はどこか自分に自信がなく、そうすることでしか自分の不安を消すことができない人たちなのだろう。
 そういう意味では、診察室で「先生、実は」と悩みを率直に打ち明けられる人のほうが、ある種の心の強さやしなやかさを持っている人なのかもしれない。
 ムリして強く見せずに、ときには弱音も吐いてみる。これが私が精神科医としての経験から学んだことだ。さあ、あなたもいかがですか?

香山リカさん
香山リカ
昭和35年札幌生まれ。東京医科大卒。豊富な臨床経験を生かして、現代人の心の問題を中心にさまざまなメディアで発言を続けている。専門は精神病理学。NHKラジオ「香山リカのココロの美容液」パーソナリティー。精神科医、立教大学現代心理学部映像身体学科教授。
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